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令和3年 年末調整 改正点の概要
2021/08/16

まだ年末調整に取り掛かるには早い時期ではありますが、令和3年年末調整の改正点についてご説明しようと思います。
年末調整事務を担当される方々のご参考となれればと思います。
本日ご紹介する内容は以下の3点です。

1.税務関係書類における押印義務の見直し

2.電磁的方法により申告書を提出するの場合の税務署長の事前承認廃止

3.年末調整手続で電子化できる書類

1.税務関係書類における押印義務の見直し

税務関係書類については、これまで提出者の押印をしなければならないこととされていましたが、令和3年度税制改正により、令和3年4月1日以降、一部のものを除いて、押印を要しないこととされました。
年末調整関係書類においては、以下の書類の提出者の押印欄が削除され、押印が不要となっています。
国税庁ホームページに掲載している申告書等の様式については、順次、押印欄の無い様式に更新しているようですが、9月に確定版が公開されるものもあるため、確定後に準備を進めていただくとよいかと思います。

申告書名 公開状況
令和3年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 すでに押印欄が削除されたものが公開
令和3年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 押印欄のみ削除されたものが公開、確定版は9月に公開予定
令和3年分 給与所得者の保険料控除申告書 押印欄のみ削除されたものが公開、確定版は9月に公開予定
令和3年分 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 ●令和2年中住宅取得の方→10月頃に令和3年分以降の申告書が税務署から送付されます。押印不要。
●令和元年以前住宅取得の方→すでに押印欄が記載されたものがお手元にあるかと思いますが、押印は不要となります。
※任意で押印された場合でもその効力に影響はないとされています。
令和4年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 押印欄のみ削除されたものが公開、確定版は9月に公開予定

2.電磁的方法により申告書を提出するの場合の税務署長の事前承認廃止

従来は、所得税の源泉徴収にあたり、給与等の支払を受ける者(従業員)が給与等の支払者(勤務先)に対し、下記の申告書を電子データで提出する際は、事前に「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を税務署長に提出し、承認を得る必要がありましたが、令和3年4月1日以後に提出する申告書についてはこの申請書の提出が不要となりました。
この申請は、申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとされるため、源泉徴収義務者(給与を支払う会社)は、10月から申告書の電子データを受領したい場合には8月中にこの申請書の提出をしておく必要がありましたが、今後はこの手続きが不要となります。

①給与所得者の扶養控除等申告書
②従たる給与についての扶養控除等申告書
③給与所得者の配偶者控除等申告書
④給与所得者の基礎控除申告書
⑤給与所得者の保険料控除申告書
⑥給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
⑦所得金額調整控除申告書
⑧退職所得の受給に関する申告書
⑨公的年金等の受給者の扶養親族等申告書

3.年末調整手続で電子化できる書類

令和3年6月に更新された国税庁『年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ』の中で、年末調整手続で電子化できる書類は下記のとおり限定列挙されています。

【年末調整申告書関係】
①扶養控除等申告書
②配偶者控除等申告書
③保険料控除申告書
④住宅ローン控除申告書
⑤基礎控除申告書
⑥所得金額調整控除申告書

【控除証明書等関係】
⑦保険料控除証明書(生命保険料(新・旧)、個人年金保険料(新・旧)、介護医療保険料及び地震保険料に限る。)
⑧住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書
⑨年末残高等証明書

昨年までは、従業員は書面で提供を受けた保険料控除証明書を紛失した場合には、保険会社等に再発行依頼をしなければなりませんでしたが、その手間が不要になり、会社側は控除証明書等が電子データで提出された場合には、添付書類の確認に要する事務が削減されることになります。
一方、国外居住親族に係る親族関係書類・送金関係書類、小規模企業共済等掛金(iDeCo)払込証明書など、上記以外の書類は電子データでの提供は認められていませんので、従来どおり、書面にて提出していただく必要があり、注意が必要です。
なお、電子データにより提供された年末調整関係書類は、紙での保管と同様、その提出期限の属する年の翌年1月10日から7年間の保管が必要となります。

あとがき

リモートワークが普及し、年末調整事務を担当される方、書類を揃えて提出される従業員の方にとって年末調整の電子化は注目されているものかと思いますが、何をどのように電子化するのがそれぞれの会社の状況に合っているか、事前にフローを整理して、担当者、従業員の方々にとってよりよい方法で運用されることがよいと思います。
業種によっては、引き続き紙での申告書の提出、チェック、保管をされる方もいらっしゃるかと思いますが、押印がなくなっただけでも双方の負担が軽減されるのではないでしょうか。